昭和初期の夏休みー22009/08/02

小学1年生の夏休みに初めて父の実家を訪れた。
女学生になりたての姉と3歳上の兄と3人で5時間くらい汽車に乗って着いたところは山に囲まれた小さな村だった。
駅には従兄が迎えに来てくれて、それから田んぼや畑の中の小道を30分くらい歩いてやっと家にたどり着いた。

本家だが祖父も伯父も私の生まれる前に亡くなって広い家に伯母と従兄だけがひっそり暮らしていた。
祖父は普請道楽だったそうで2階の二間続きの座敷は凝っていた。 夜 3人並んで寝て天井を見上げると子供ながらに天井板が立派だと思った。 今思うと山国のせいもあったかも。
駅から歩いた道から見えた家も皆黒光りのした瓦葺だったから豊かな田舎だったのかもしれない。
父の生家は農家でも商家でもなかった。 何で生計をたてていたのだろう。 父からそういう話を聞いた覚えがない。 ただ教育熱心で田舎には珍しく6人の娘たちもそれぞれ進学させたそうだ。
 こういう話はのちに聞いたことだ。

小学1年生の私は初めての田舎の何もかもが珍しくて楽しくて一人で野山を歩き回っていた。 広い土間に井戸が有り、土間の片隅のお風呂にくみ上げた水を手桶で運び、お風呂には電気がなくてランプが置いてある。 そもそも座敷の電気も暗くならないと点かない! 夜、お手洗いには真っ暗ななか行くのである。
私はハイジになったような気分でわくわくすることばかり、伯母さんはことに可愛がってくださるし、1週間くらいだったと思うがあっという間に日が経った。

兄は従兄と前の川で水遊びや魚やサンショウウオまで捕って楽しかったようだが都会好きの姉はもう行かないとあとでこぼしていた。

朝のラジオ体操をしに村の神社の境内に一人で行ったが話しかけてくれる子はいなくって私も無口だったから友達はできなかった。
テレビのない時代に山奥の村と都会は服装だけでも違いは大きかった。 何だか遠巻きに眺められてた感じ。 戦後とは全然違う。

田舎の自然が大好きになって、3年後の夏休みには私一人で遊びに行った。 あの汽車がまた良かった! トンネルに入る時、出る時の汽笛! 振動音! 山や畑ばかりの景色も美しかったなあ。