姉の想い出2012/02/01

姉に描いてもらった
連ドラの東京芸大を受験する話を観て姉のことを書きたくなった。
生きていれば3月には90歳だったが6年前に亡くなった。
小学生のころから近所の先生に絵を学んでいてその先生の紹介で本格的に油絵を始める。
最初はお弟子さんは若い男性ばかりで女の子は一人だけだったらしい。
女学校1年生の頃にはもう裸婦を描いていたようだ。
5年生のときに先生が属していらした二科展に初めて応募して入選し母と二人で東京に行き嬉しそうだった。
新聞記者が取材に見えたりして兄も私も浮き浮きしたものだ。

卒業すれば上野の美術学校に行きたいと姉は切望し、周囲も当然だと思っていたのに父が反対した。
女性も上級学校に進学すべきだと新しい考えの父だったが矢張り結婚が女性の幸せだと考えていたようだ。
それに戦争がどうなるか、東京に出すことも不安だったらしい。
先生も父に頼まれたのか後押ししてくれなかったと姉は口惜しそうだった。
結局地元の国文科に進学して父に谷崎潤一郎の「源氏物語」を買って貰ったりしてたけど今思うと惜しかったな。

翌年100号の子ども達が絵を描いている群像が入選したのが最後だった。
素敵だった義兄とお見合い結婚してからは殆ど絵筆を取ることはなかったのではないか。
お互い子ども達が巣立った後に電話でよく話し合ったが当時のことに触れると「上野に行きたかった」と沁みじみ述懐していた。
時代が悪かったし長女だから家出も出来なかったのだろう。
子どもや孫に恵まれた晩年の幸せを思うとどちらが良かったのか判らない。

私が結婚する時に鏡台の被いに絵を描いてくれたのが残っていた。
これしか姉を偲ぶよすがは無いので写真を撮ったが姉がいたら不本意だって怒るかな。
モダンで私は当時気に入っていたのだけど。