開戦の日2013/12/08

不安
またこの日が巡って来た。
昭和16年、今年も無事に終わるかと思っていたのに早朝のラジオの緊迫した放送に驚愕が走る。
長引く日中戦争、ABCD包囲網で石油は輸入出来ず、庶民の暮らしは苦しくなり打開策が有るのかと重苦しい日々だった。
女学校の2年生だった少女が理解出来ることには限度が有ったが先行きの不安は感じていた。

ラジオから流れるうわずったアナウンサーの声がハワイでの華々しい戦果を繰り返し、勇ましい軍歌が流れる。
中学生の兄もすっかり興奮して、新しいニュースを聞き逃すまいと二階の自室と茶の間を往復していた。
父だけが「まさかなぁ」と苦笑しながら憂慮している様子が気になった。
私は不安はあっても新しい展開に対する期待と高揚した気分になっていた。
敗戦までの4年間の地獄のような苦しみの始まりとも知らずに。

世界中を悲劇に巻き込んだあの時代は何だったのだろう。
何十年経った今も、どうして世界中が賢く仲良く出来ないのだろう。
現代の閉塞感が開戦前の想い出とどこかで繋がって不安だ。
人類があの頃より進化していると信じたい。