懐かしくて2013/08/31

クロッキー(部分)
最近は裸婦デッサンの授業が無くて些か淋しい。
夢中になっていた頃に私も素敵なモデルさんに出会って書いた文の抜き書きを。

     「プロの心意気」
ステキな モデルさんに遇った。
モデルはただじっとしてれば良い楽な仕事と思う人もいるだろうけれど20分間でも同じ姿勢を保つのは大変なのだ。
立ちポーズだと重心が右足だったのが左足に移動したりする。
休憩の後は手の位置や顔の向きが微妙に変わる人が多い。
描くほうが頭を使って気に入った形に仕上げるものなのだそうだ。
静物じゃないんだから。生身の人間だものね。それも勉強の内だって。

今回のモデルさんはしっかりしていた。
形を決めたら微動だにしない。
立ちポーズだったが身体をぐっと捻って美しいポーズ、
「それで大丈夫?持つかい?」と先生が心配して声をかけた。
「大丈夫です」と言い切った。
休憩した後も、次の週も見事に同じ姿勢で決まったいた。

モデルさんは休憩時間に文庫本を読む人が多い。
彼女は5分の待ち時間でもステージの上でヨガのような柔軟体操をする。
休み時間には インド更紗のような大きな一枚の布を上手に洒落たロングドレスのように着こなして屈伸、前傾、下半身の逆立ちなどなど全身の筋肉をほぐして鍛えるのに余念がない。

その努力の真価がクロッキーの時に発揮された。
10分なら持つポーズ、5分だから持ち応えられるポーズがあるのだと彼女は言う。 ポーズは全て彼女任せである。
思わず「うお~」と嘆声が洩れる程見事なポーズを次々見せてくれた。
「みんな 一つでも家に帰ってから試してみぃ~」と先生がのたまう。
「次回全員欠席~」

終って全員で「有難うございました」と言った後に
「ほんと 素晴しかったよ」「ありがと~」と。
モデルさんも溶け込んで楽しい雰囲気だった。
最後の日 踊り場で遇った彼女に「良かった! 凄かった」と声をかけた。
「好きなんですよ。 次はこのポーズで決めてやろう。やったぁ なんて」
鍛えられた若い身体に笑顔が輝いていた。
「さよなら また遇いたいですね」「ええ 是非!」
 
                  2001.4.30

あれから十年以上の月日が流れた。 どうしてられるかなぁ。
添付のデッサンは違う方です。