とび(とんび)2012/11/24

泉鏡花の石碑(草迷宮)
鎌倉のトビ被害の深刻さを伝えるテレビを観ながら10年前に住んでいた浜辺を思いだした。
小さな港に漁船が帰ってくるとトビの群れが空イッパイに広がって壮観だった。
どれくらい小魚の落ちこぼれにありつけたのだろう。 無理だったと思う。
トビが自力で漁をしているのは見たことが無いからカラスより厳しい環境に思えた。

「トンビに油揚をさらわれる」
って諺は子どもの頃から聞いている。
現に義姉が子どもの頃お使い帰りに持っていた食品(油揚かは不明)をトビに攫われたって笑い話になっていた。

それが海辺の家に移り住んでから身近に経験する事になった。
友達と連れ立って浜辺や裏山を歩きお弁当を広げて夢中でお喋りしていると後ろからサアッと風が吹き抜けた感じでアレって思った時はもう手に持っていたお握りなどを持っていかれてる。
敵ながら天晴な早業だ。
フライドチキンなどは大好物のようだ。
上手に狙いを定めてこちらを傷つけることもなかった。

それから気をつけて空を見る癖がついたが、お弁当を広げたり、庭でバーベキューなどすると必ず何羽かが旋回していてこちらを窺っている。
用心していれば大丈夫だった。

或る日、近くの小さな公園に絵の仲間5〜6人でスケッチしに行った。
お昼になって屋根だけの東舎でお弁当を広げて、暫くして気が付いたらトビが十数羽が遠巻きにうろうろしながらこちらを見ている。
あきらかにお弁当を狙っているのだ。
その時ばかりはチョット恐ろしかった。
早々に食事を終えてバッグに仕舞い込んでからも未練げに覗いていたがやがて諦めて次々飛び立っていった。

大型な割には安全な鳥ってイメージが有る。
トンビって言って親しんで来た。
カラスの集団の方がよっぽど恐ろしいが、観光客で賑わう鎌倉は迷惑だろう。 小町通りでは食べ歩きしている方も多いもの。

添付写真は海に面した小さな公園の泉鏡花の石碑。
草迷宮はこの辺りが舞台になっている。
写真の文字がはっきりしないので付記。
 
 草迷宮
大崩壊(おおくずれ)の巌(いわお)の膚(はだ)は、春は紫に、夏は緑、秋 紅(くれない)に、冬は黄に、藤を編み、蔦(つた)を絡(まと)い、鼓子花(ひるがお)も咲き、竜胆(りんどう)
も咲き、尾花が靡(なび)けば月も射(さ)す。

            泉鏡花