切り取る2012/07/21

都会の山百合
最近、新聞小説を読まなくなった。
連載小説だけではなく新聞そのものに興味が薄い。
一応全部めくって見出しによって処どころ讀んで終わりだ。
考えて一時購読を止めてみたがやっぱり不便だということが判って続けている。

戦前は新聞は家族で取りあって讀んでたし週刊誌、月刊誌の幾種類かも不可欠だった。
七十歳を超えた伯母さんたちも新聞を良く讀んでいたから、今の私が新聞離れをしたのは歳のせいばかりではないだろう。
その頃の楽しみの一つは連載される小説だった。
母と姉が夢中になっていた川口松太郎の「蛇姫様」は小学生だった私は讀ませて貰えなかったが岩田專太郎の挿絵が美しかったのが記憶に焼き付いている。

戦争中には獅子文六が本名の岩田豊雄で連載された「海軍」に他の戦争物とは違う感銘を受けたが内容はもう朧げだ。
昭和25年の彼の「自由学校」で戦後を深く感じた。
新聞小説は明日が待ち切れないくらい楽しみにしていたのだ。
その楽しみに挿絵は欠かせない。

ここ十年近く讀んでいなかったのに、数日前から朝日新聞に筒井康隆氏の「聖痕」の連載が始まって讀みたくなった。
ことに挿絵がご子息の筒井伸輔氏だ。
もう十何年前になるだろうか、初めての個展を観に行った覚えが有る。
写真撮影の許可を貰ったが新しいカメラでモタモタしていたら伸輔氏が親切にセットして下さった。
あの頃から印象に残る絵だった。

昔、母が岩田專太郎の挿絵の載っている新聞小説を切り抜いて束ねていたことを思い出して真似ることにした。
独り暮らしの気楽さで新聞を広げて気になった記事(料理など)や本の広告は即切り取っている。
今度のはクリップで束ねて分厚くなって行くのが楽しみで時々取り出して讀み直したり眺めたりしている。