御座候 正岡子規2010/02/03

水仙(水彩) 昔ながらのこの種が好き

例によって整形の待ち時間用に文庫本を携えて行った。
正岡子規の「歌よみに与ふる書」 岩波文庫
昨年暮れのNHKドラマ「坂の上の雲」で子規を近しく感じて興味を持ち、書棚の隅に有ったこの本を持ち出した。

昔 司馬遼太郎の「坂の上の雲」を読んだ時の子規の記憶は薄いし、俳句に関する知識は少なく、短歌に至っては百人一首くらいだ。
それが ドラマで香川照之演じる子規像の逞しさにイメージが変わった。

「歌よみに与ふる書」は
”明治31年に発表され「古今集を和歌の聖典としてきた千年の歴史が持つ価値観を転倒させた衝撃的な歌論で、万葉の歌風を重んじ、現実写生の原理を究明した、和歌改革への情熱が漲っている”
の意の解説が表紙に書かれていた。

読みだして驚いたのは、漢文体というのか最後は候で終わる。
「御座候」「可申候」「可被下候」「有之候」「無之候」などなど。
ござそうろう 以外はほとんど返り点でモウスベクソウロウ、クダサルベクソウロウ、コレアリソウロウなどと読むが若い世代も常識かもね。

いやあ 新鮮で内容より先にその文体に魅かれた。 口調がいい!
最後の「御座候」などは余計なのだが、激しい論調の緩和体になってて、慇懃無礼とは異なる余裕を読者に与えてくれる。

読み進んでから旧仮名遣いで有ることに気がついた。 それほど自然に脳に流れ込んでいた。 旧仮名遣いが美しく感じられた。

少しは耳に親しんでいた日本の古来の短歌を新しい思いで見ることが出来たが、奥の深さはここに書ける段階ではない。

ただこの本を読んで 色んな意味で楽しかったし視野が広がった思いだ。
明治という時代 熱気にあふれていたのだろうな。