自動車今昔 戦前2009/11/19

糸車のある静物

昭和初期に自動車はまだ数が少なかった。
路面電車やバスの走る国道以外の道路は全然舗装されてなくて、牛や馬が曳く荷車や、人力車が通る程度だから子ども達は道の真ん中を安心して歩いたり走ったりしていたものだ。

その頃自家用車を持ってたのは少数で家人は運転せず運転手を住み込ませていた。
ただタクシーはかなり普及していて、円タクという言葉があったがどこまでが1円だったのだろうか?
フォードと聞いた覚えがあるが大きくて乗り降りに便利なように脇にステップがついていたと思う。
中も広く、前の席の裏側には補助席が引き起こせる様になっていて子ども達はそこに座らされた。丁度馬車の座席のようだった。
仲良しの二家族が子ども連れでデパートに行くと帰りはタクシーに乗って帰る。 楽しみだった。

家族で帰りが遅くなった時には、郊外電車の駅を降りてちょっと裏手にある押しボタンを押して暫くするとタクシーが現れた。
母がそれを押しに行くのを見て幼な心に不思議だった。 自動車がすーっと走ってくるのがまるでシンデレラの魔法の馬車みたいに思えた。
その頃自家用車が持てる日がくるなんて想像もしていなかったなあ。

戦時色が濃くなると「ガソリン一滴、血の一滴」と言われ、バスは木炭で走る時代になり、生徒は勤労動員で松根油を掘った。

我が家に小さなダットサンが来たのは終戦後15年経ってからだ。