想い出の本に2017/03/09

思い出の本
気持ちの良い青空だけど、明日はアトリエに行きたいから自重して大人しく書類整理などで過ごした。

この時期になると思い出すのは昭和22年の今頃のこと。
終戦から2年経って、私は女専の卒業を目前に控えていたが、
肺炎で危篤状態の父が心配で学校は休んで付き添っていた。

昼間は看護婦さんが居てくれたけれど、夜は私が父の傍に布団を敷いて休んだ。
幼い時から父っ子だったから。
それに母もいろいろと昼間の看護と雑用で疲れてるのも解っていた。

私など、ただ様子を見て、弱々しい声で頼まれたことをするだけ。
すやすやと父が寝てると、そっと枕元の電気スタンドを隠すように点けて本を讀む。

家に呼び返される前に、学校に近くの古本屋で買ったばかりのミルトンの「失楽園」が気になっていた。
父が本好きでこの世界全集は愛読したものだが、何冊か欠けていて、この本も無かったのを、偶然見つけた時は嬉しくて買ったのに讀むヒマが無かったのだ。

夢中になって讀み耽っていたら、
「何讀んでるの」
と父の声にハッとする。
コレって見せると、弱々しい声で
「面白いか?」
「うん」
父は少し微笑んでくれたけど、申し訳けなくて慌てて閉じた。

この時のことはブログ始めた翌年、2013/3/13に書いている。
あのとき以来、讀めなかった「失楽園」を本棚に見付けて、
もう 読んでも父も笑って許してくれるかな と開いてみたけれど老眼にはキツイです。

訳者が繁野天来と有って驚きました。
出身地が全然遠いから関係ないみたいです。