昔も今も(訂正版)2010/05/31

谷間のせせらぎ
病院の待合室で読む本を出掛ける間際に捜し、結局薄い岩波文庫「ことばの響宴」をバッグに放り込む。
案の定待たされ あらかた再読できた。(読者が選んだ岩波文庫の名句365)の副題のこの本は、古今の有名な本から引用されてる語句が読んでて思わずニャッとしてしまったり、同感したりして楽しい。

例えば
  セネカ「人生の短さについて」より
《生きることの最大の障害は期待をもつということであるが、それは明日に依存して今日を失うことである。》
これは私が楽に生きるために信条にしていることだったのでニヤッとした。期待しなければ失望はない。でもチョット淋しい逃げみたいな思いもある。

なかで一番ショックだった言葉は
  ロマン・ロラン「魅せられたる魂」より
《もし世の中の人の苦しみに一々足を停めていた日には、人は生きてゆかれないだろう! どんな幸福も、他の人間の苦悩を食って生きているのだ。》
最近のニュースの中で心傷めた問題を連想した。自分なりにいろいろのことを考え強い不安も感じたが政治について発言出来るほどの深い知識はないので控える。ただ人の痛みには深い同情を覚えてもそれ以上には踏み出せない。自分のエゴを思った。

ロマン・ロランのこの本は若いときに夢中になった本なのに内容は朧げになっている。本棚の奥に色あせているがン十年ぶりに読み返してみようかな。 それとも淡い甘い想い出のままにしておいたほうがいいかしらと迷う。

こういう言葉も見つけた。
   夏目漱石「行人」より
《人間の不安は科学の発展から来る。進んでとどまることを知らない科学は、かつてわれわれにとどまる事を許してくれた事がない。》
 漱石が既にこういうことを考えていたことに驚きが有った。現在の進歩を見たら漱石はどう思うだろう。
確かに科学の進歩は生活を豊かにし楽しみも多くなった。医学の進歩は寿命を延ばしてくれている。 宇宙への知識も深まり,ナノの世界も解明されつつ有るらしい。でも人間の素朴な不安は解消されるより つのっていく気がするのは私だけだろうか。

世の中の暮らしはすっかり変わったが、古の人の言葉は今も生きていて共感したり、教えられることが多い。

※訂正版にしたのは、先に書いた文が 引用部分の多い事が後で気になりネットでルールを調べて書き直しました。